この本を書かれた神谷美恵子女史は心理学者でハンセン氏病患者の心のケアに尽力した方です。また若き日の美智子妃殿下の相談役としての立場にもおられました。ハンセン氏病=らい病について私は良く知らないのですが、容姿が大きく変わり体のいくらかの部分が膨れ上がったり色が代わったりする症状については見たことがあります。宮崎駿の「もののけ姫」で包帯をまいて銃を作っておられた方々はハンセン氏病の方たちがモチーフであると思われます。
実際には空気感染はしない病気だと後に判明するのですが、空気感染し母子感染すると考えられて時期があり、その時期はハンセン氏病患者には強制隔離政策がとられていました。空気感染するという誤解から家族から引き離され、母子感染するという誤解から子供を作ることも許されないという過酷な状況。また、その容姿の変貌から差別を受けやすく、無癩県運動(むらいけんうんどう)等により、ハンセン氏病への偏見は強まる一方でした。
そういった偏見が強まったため、ハンセン氏病の家族ですら、自分達の「家系」から「らい病」が出ことを隠したいがために、彼らの存在自体を世間に隠す、療養所に送り込んで存在そのものを消してしまうという差別を余儀なくされていたのでした。
このような「生きがい」というものを全く見失ってしまいそうな隔離社会においても、一部の患者は今現在自分の置かれている場所で、やるべきことを見つけ、あるいは作り出し、それに「生きがい」や「やりがい」と見つけていきます。そしてある人たちは、「人生など時間つぶしにすぎない。」と卑屈になりニヒルに逃げます。そういった人達の間にはどういった違いがあるのか?生きがいを失った人たちはどういった機会にもう一度生きがいを取り戻すことが出来うるのか、そういったことの書かれている本です。
これはハンセン氏病患者に限らず、一般社会でも同じようなテーゼがあるように思います。人生の「生きがい感」「無意味感」は、どこで、どういった機会に、何によってもたらされるのでしょうか。例え、それが、社会からドロップアウトしたように見えるホームレスの方々であっても、同じ公園や川辺に住み、人が集まり始めると、そこに社会ができ、秩序をたもつためにルールができてゆくようです。そしてまた、小さな共同体の中で同じような問題が起こります。
私自身も病床のおり大規模MMOというタイプのインターネットゲームに依存していました。そこに人が集まるかぎり、例えバーチャルであっても社会ができ、人間関係ができ、そこに「居場所」や「やりがい感」を求めてしまいまいた。持病があり体が動かない事情はありましたが、今となっては、実社会に実態を持たない「居場所」や「生きがい感」は非常に危険だっと思います。少し、話がそれてしまいましたが、人生の「生きがい感」「無意味感」のヒントがたくさん書いてあるので、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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生きがいについて (神谷美恵子コレクション) [ 神谷美恵子 ]
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