私にとって、上記のお二方は上品すぎて、とても手の届かないような憧れの存在ですが、宇野千代氏、瀬戸内寂聴氏は、まるで自分を見ているような親近感や共感を持ってしまう存在です。
私の持論で、人にとってもっとも辛いことは
・自分らしく生きられないこと
・自分に嘘をついていること
・愛されていないと感じること
だという考えがあります。
少なくとも私はこの3つの全てに当てはまってしまったら死んでしまうか、狂ってしまうのではないかと思います。宇野千代氏は明治生まれの方で、まだまだ女性に対する制約の多かった時代に、まるで現代人かのように自分の人生をいきいきと鮮やかに生き女性です。(特に男性からの)愛情を獲得することに貪欲で、自分の気持ちに正直に生き抜いて亡くなられました。
世間で一般的であるとされている道徳観や倫理観などは気にかけず、「自分の気持ちに正直に生きる生き方」は、世間様の強い反感や嫉妬をかったであろうし、多くの常識人とされている人々を不愉快にさせ、傷つけ、巻き込んでいったに違いありません。
それでも、宇野千代氏の生きる姿勢は常に悪気がなく、明るく、あっけらかんとしていて、どんなに非常識で無茶苦茶をしていても、どこか憎めない愛される何かを秘めています。「生きていく私」はそんな宇野千代氏の自伝的著書です。周りの人間が自分をどう評価しているかなど全く気にせずに「自分の人生を生きる」という、いさぎよい生き方。そして、愛するということ、創造するということに、全ての情熱を注いで、他のことに目もくれない一途な生き方。是非、堪能していただきたいと思います。
また、宇野千代氏は、どんなに年齢を重ねても、どんなに苦境に立っても自分を信じ、人生を楽しみ、「生きることは行動すること」と言い切り、その生涯に渡って、何かしら行動し続けました。ああ、何歳になっても好奇心と自己肯定感さえあれば、何とかなるもんだなぁ…と、不思議な勇気が沸いてくる一冊です。